【質疑応答】
問)
世界経済の見通しについて伺います。アメリカのトランプ大統領が今月就任をすることになっておりまして、いろいろ経済への影響が言われています。安倍総理は昨日の政府与党だったと思いますけれども、世界経済は全体的に上向きつつあるということを述べられました。大臣はどう見通されているかということを伺いたいと思います。為替とか株価とかいろいろな影響があり、加えてヨーロッパでは重要な選挙が幾つか控えております。そういったことも含めて御所見をお願いいたします。
答)
トランプ氏という新しいタイプの大統領が出てきた、それによってどういう話が出るかというのがよく去年の後半から話題になっていましたけれども、分析、予想をみんな間違えたのではないでしょうか。1980年代にロナルド・レーガンという人が大統領になったときも同じように書いてありました。しかし結果として歴代、戦後のアメリカ大統領で名大統領になったのはレーガン氏。そう思ってトランプという人をもう1回見直してみるというようなつもりでやらないと、固定概念で見てしまうと間違えるとずっと言い続けてきたのですけれども、今選んでいる閣僚、問題はその下の、次官とか次官補とか、そういったレベルがはっきりしてこないとよく見えません。3,000人からの人が代わるのですから時間がかかると思いますけれども、そういったところが見えてくるまではまだ何とも言える段階にはないとは思います。今出てきている閣僚の中でこれまでの経歴から推察すれば、経済というものはアクセルを踏む方になっていると思いますので、我々としてはどういう具合にこれからリードしていくかという話にはなるのだと思っていますけれども、間違いなく景気を好転させる方にハンドルを切ろうということを考えているように見えます。
ヨーロッパの場合は日本のように、97年、98年の金融危機のときに多くの銀行が倒産した、もしくは合併した。しかし同じような状況に2008年、リーマンブラザーズのときにももっと騒ぎになった。日本の場合に比べてヨーロッパの方がもっと、サブプライムローンなる怪しげな商品、金融派生商品を買った比率が高かったので、痛みも大きかったのだと思います。その整理は終わったかと言えば終わっていないがゆえにマイナス金利をやり、いろいろしているのだと思いますけれども、先行きはいま一つ、ドイツ銀行ですら騒ぎになるということですから、いろいろなものがまだまだ日本みたいに処理が終わっていないという状況で銀行は、金を貸せない。投資をするなんていうことはなかなかできない状況にあるだろうなというのは想像にかたくないところだと思います。
アジアの場合は中国が発表する数値が本当ですかと言いたくなるような数字しか出ませんし、簡単に言えば月例報告のようなものが、約1億2,000万人の日本でも、指標によっては2か月前の数値がやっと最新値というものがあるのに、中国は翌月には出て、約13億人いるのが翌月に出せるというのはすごいコンピュータシステムがあるか、最初から数字をつくってあるか、どっちかだと考える方が常識的なのだと思います。数字をこっちから予想して当てるのは極めて難しいのだと思いますけれども、外貨準備が減り始めているという形になってきているのは事実ですから、海外から投資が減ってきているということを意味しているのでしょうし、利益も出ていないということなのだろうとは思いますけれども、よく読めません。
いろいろなものが今から流動的になるので、NAFTAのあの話にしても、例えばメキシコに移ろうとしたフォードの移転を止めて国内でつくれというふうな話を次期大統領が言い、フォードはそれに従って工場移転は中止、代わりに国内に投資し、雇用が700人増えますというような形で、いろいろやろうとしているのでしょうけれども、メキシコにとっては、工場ができて車が売れれば利益になるし、雇用も増えて都合のいい話だったのでしょうけれども、それがなくなったということがメキシコにとってどういうことになるのかという計算は、今から時間をかけないとその答えは見えてこないのだと思います。
先行きについても、大きな地域だけ見てもなかなか簡単な、まだ見通しが立てられるところまで来ていないように思いますので、日本はそれらの被害を最小限にとどめるようにうまく対応していかなければいけないのだと思いますけれども、ドルがこのまま上がっていくと、金利をちょっと上げる、0.25%上げただけでドルが移って、海外からキャピタルフライトが起きて、ドルが新興国から出ていってアメリカに集まる、当然ドルは強くなるということになります。強くなった結果、キャッシュがそこに集まると、マーケットからキャッシュがなくなることも十分考えておかなければいけない話なので、日本としてはそういったところも十分考えながらやっていかなければいけないところだと思います。まだ見えていないところがいっぱいありますから、今の段階でこれですというような段階にはないのではないでしょうか。
問)
日韓通貨スワップについてお伺いします。先程の官房長官会見で釜山市への少女像の設置を受けて日韓通貨スワップを中断するという発表がありました。この協議の現在の状況と再開の可能性を含めて今後の方針について教えてください。
答)
日韓のスワップというのは昔からの経緯というのを思い出していただかないといけない。日韓の間は700億ドル近くのスワップが立っていたはずです。それが民主党政権の間にどんどん減って、そして今の政権になった時130億ドルになっていました。こちらから大丈夫ですかと聞いたら、大丈夫だという話だったので、残り130億ドルのうち日銀の30億ドルも失効しました。残り100億ドルになったので、大丈夫ですかと2回も3回も念を押したけれども、ゼロになった。韓国と中国との間には500億ドルぐらいのスワップがあるはずですが、それが今年切れるはずです。今言ったようにドルが新興国市場からなくなっていくと、韓国としては厳しいことになると思って、向こうから要請がありましたので、議論をスタートすることを考えました。その際、自分でスワップに関する協議の再開を頼むということを正式に示してほしいと要請したところ、昨年8月の日韓財務対話のプレスガイドラインが出ました。それで交渉してみたら、まずは100億ドルとか、そうではなくてまずは500億ドルみたいな話が出て、水準がはなから違っていましたので、時間をかけて交渉しましょうという話をしている途中でした。今言われたように官房長官から談話が出ていると思います。信頼関係というものをきちんとつくった上でやらないと、こういったようなものはなかなか安定したことになりませんので、今般は当面の措置としてということで官房長官からの発表があったんだというように理解していますけれども、中断するということにしたという事実は間違いありません。
※詳細は下記ソースよりご確認ください。
【ソース】財務省:麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣閣議後記者会見の概要(平成29年1月6日(金曜日))