2019/04/08

【消費者庁】4歳女児の膣に恐竜の卵 全身麻酔で摘出手術

  カプセル入りスポンジ玩具(以下「当該玩具」という。)は、ゼラチンでできた小さなカプセルの中にスポンジが圧縮されて入っており、水やぬるま湯にカプセルをつけるとゼラチンが溶けて、中の恐竜、果物、動物などの形をしたスポンジが出てくる玩具です。

  2018年12月、以下のとおり、消費者安全法(平成21年法律第50号)に基づき消費生活センターから消費者庁に生命・身体被害に関する重大事故等として当該玩具に関する通知がされました。

  入浴中、保護者の知らない間に当該玩具が4歳女児の腟に入り、不調が続いたものの医療機関で原因の特定に約4か月、当該玩具の摘出までに更に約1か月と時間を要した事例です。

  消費者庁に寄せられた当該玩具に関する事故情報は、現在のところ1件のみですが、当該玩具は今回の事故のように腟からの体内への侵入以外にも、飲み込んだ場合には誤嚥や窒息のおそれもあります。

  今後も同種又は類似の消費者事故等が発生するおそれがあるため、消費者の皆様に注意を呼びかけます。保護者は当該玩具の危険性を認識し、目の届く範囲で遊ばせましょう。また、乳幼児の手の届かないところに保管するよう注意してください。

  この注意喚起は、消費者安全法第 38 条第1項の規定に基づき消費者庁が公表するものです。また、この情報を都道府県及び市町村に提供し、周知します。



1.当該玩具について

  当該玩具は、「水でふくらむスポンジ」や「水でふくらむ!スポンジカプセル」などとうたって販売されており、1つのパッケージに 12 個のカプセルが入っているものが多く見られます。

当該玩具のパッケージのイメージ


  カプセルは無色透明のゼラチンでできており、中に恐竜、果物、動物などに型抜きされたピンク、水色、黄色などのスポンジが圧縮された状態で入っており、カプセルが水やお湯に溶けたときに、どのような形や色のスポンジが出てくるのかを楽しみにして遊ぶ玩具です。

  当該玩具で今回調査したものは、3歳以上を対象としており、今回、消費者庁に寄せられた事故による患者は4歳であり、対象年齢に適合していました。

  カプセルは、健康食品や医薬品のカプセルと同様の形状をしており、お湯でカプセルを溶かすと、中のスポンジが展開します。

カプセルの例


当該玩具のカプセル展開前後の形状(例)




2.消費生活センターに寄せられた事故の情報について

  2018 年9月に、患者の主治医から消費生活センターに事故情報が寄せられ、その後、消費者安全法に基づき消費生活センターから消費者庁に生命・身体被害に関する重大事故等として事故情報が通知4されました。

4 2018年12月20日に重大事故等として公表済み。

  消費者庁は、この事故について、主治医及び主治医の勤務する病院(以下「当該病院」という。)の協力の下に、主治医及び患者の保護者に対し聞き取り調査を行いました。

(1)事故事例 

患者の主治医である医師から、次のとおり情報提供がありました。

不正出血で、過去に当該病院を受診した患者がいた。当該病院を受診する前に1か月ほどの間、他の複数の医療機関で診察を受けたが原因不明であったそうだ。当該病院でも不正出血の原因が腟内の異物によるものと判明するまでに1か月ほどかかり、その後、全身麻酔をかけた手術で異物を摘出した。摘出された異物は、当該玩具であった。

同種の事故が起こる可能性は高いと思われるため、情報提供する。

(事故発生年月:不明 4歳(当該病院受診時)・女児)

(2)聞き取り調査により確認した事故の経緯 

  患者の保護者によると、100 円均一ショップで当該玩具を複数の銘柄購入し、約2か月の間、毎日のように入浴中に当該玩具を1つ使用して遊んでいたとのことです。

  当該玩具で遊び始めてから2か月ほど経った頃(以下「不調発生日」という。)、保護者が患者の下着に薄い血液が付いているのを見付け、医療機関を受診しました。その後、症状は改善されず、微量の出血、外陰部の滲出液によるただれ、強い臭気の症状が続き、医療機関で血尿や皮膚のただれなどの処置はされるものの、原因が特定できないまま複数の医療機関を受診しました。

  不調発生日から約2か月後、血尿による症状で当該病院の小児科を受診し、その後、同病院の産婦人科に紹介され、不調発生日から約4か月後、MRIにより腟内に異物があることが判明しました(図2、写真2及び写真3)

図2.女性骨盤の断面(参考)


写真2.患者の骨盤の断面・MRI画像


写真3.患者の外陰部断面図のMRI画像


  更にその約1か月後、全身麻酔による摘出手術を行い、7日後に退院し、摘出から約1か月後には不正出血が止まったことが確認されました。

  当該病院から提供された摘出物の写真は、写真4です。恐竜型のスポンジ(類似品は写真5)と見られます。

写真4.手術により摘出されたスポンジ


写真5.恐竜型のスポンジ(類似品)




4.消費者の皆様へ

  今回の事故事例のような入浴中の当該玩具の体内への侵入、また、誤嚥や窒息事故を防ぐために、当該玩具に対する注意のポイントをまとめました。

(1)  入浴中に当該玩具で遊ぶ際には、腟や肛門から体内に入る可能性があるので、大人の目が届くところで遊びましょう。

  当該玩具で子どもが遊ぶ際には、カプセルの個数と出てきたスポンジの個数が同じであるか大人が確認しましょう。

(2)  当該玩具は、子どもの手の届かないところで保管しましょう。

  子どもの手の届く場所で保管していると、大人の気付かないうちに子どもが遊び、口、鼻、耳などの思わぬところに当該玩具を入れてしまうことが考えられます。

  当該玩具は必要個数を取り出したら、子どもの手の届かない決まった場所にすぐ戻すようにしましょう。

(3)  口、鼻又は耳に入れないように注意しましょう。

  直径や対角線長が6~20 ㎜の大きさの玩具は、子どもが口に入れると窒息のおそれがあります。当該玩具のカプセルの直径は7~8㎜程度で、一度咽頭内に侵入してしまうと、窒息の危険性が考えられます。

  また、当該玩具のカプセルの直径では耳や鼻から体内に侵入することも考えられます。保護者は乳幼児が当該玩具を口、鼻、耳などに入れないように注意を徹底しましょう。

(4)  体内に当該玩具が入ってしまった場合は、医療機関を受診しましょう。

  喉に詰まってしまった場合は、一刻も早い応急処置が必要です。また、すぐに救急車を呼びましょう。

  耳、鼻、腟などその他の場所から体内に入ってしまった場合は、すぐに身体に異常が現れなくても、医療機関を受診しましょう。



<別添> 医療関係者からのコメント

  当該玩具については、腟から体内へ侵入した今回の事故事例だけではなく、飲み込んだ場合は、誤嚥や窒息も考えられることから、2名の専門家にコメントを頂きました。

 当該玩具の子どもの腟からの体内への侵入について 

獨協医科大学 産科婦人科学 多田和美医師

1  腟から体内へ侵入した場合の危険性

  幼児の腟は非常に狭く、当該玩具などの異物が侵入するのはまれなことです。ただし、入浴中は身体が温められて筋肉が緩んでおり、通常よりは入りやすい状態にあり、腟内に入った時に出血や痛みがなくても、異物が入っている可能性があります。

  いったん腟内に異物が侵入すると自然に排出される可能性は低く、摘出しない限り長期間腟内に異物が留まり、今回のような不正出血やただれ等が起こり、重くなると膀胱腟漏8などの更に重い病気になる可能性も考えられます。

  また、当該玩具はレントゲンに写りにくく、保護者や患者から腟内に入ったとの訴えがないと、原因特定に時間がかかります。

2  保護者の皆様に御注意いただきたいこと

  現状では、当該玩具が腟内に入っていることを特定することや、身体を傷つけることなく、幼児の腟からスポンジを取り出すことができる施設や技術がある病院は限られています。当該玩具が腟に入ってしまう事故は、「発生はまれですが、発生した場合には大きな危険が伴う。」ということを多くの保護者の皆様に知っていただきたいと思います。

  入浴中に当該玩具を使用する危険性を認識し、保護者の目の届く範囲で遊ばせましょう。もし、腟に入ってしまった場合は、医療機関を早期に受診してください。

8  膀胱と腟との間に穴が開いて通路ができたもの。

 当該玩具による誤嚥事故について 

武蔵野赤十字病院 特殊歯科・口腔外科部長 道脇幸博医師

1  当該玩具を誤嚥した場合の危険性

  乳幼児は誤嚥事故を起こしやすいので、通常はカプセル状の医薬品は処方しません。当該玩具はカプセルの形状でも、スポンジの形状でも、子どもの誤嚥事故のおそれのある大きさです。

  当該玩具の誤嚥事故が起きた場合に最も危険と考えられるのは、気道に詰まって窒息することです。

  カプセルは気道に入りやすく、また、気道の中の水分でカプセルが溶けてスポンジが拡がることも、窒息のリスクにつながります。この点は、気道に入っても形状や性質が変わりにくいプラスチック製の玩具などとは異なる当該玩具の特性です。

  カプセルの形状のまま細い気道の奥に入り込むと、奥でカプセルが溶けてスポンジが拡がり、炎症を起こして、気管支炎や肺炎になることがあります。腟内に当該玩具が入ってしまった場合と同じく、レントゲンで写りにくいため、医師に当該玩具を飲みこんだ事実が伝えられないと、原因を特定するのに時間がかかります。

  当該玩具は、カプセル状の医薬品と同様の形状をしているため、大人が薬剤と間違えて飲み込むことも考えられます。この場合、多くは消化器管から排せつされますが、嚥下機能が低下している高齢者などでは、子どもと同様に窒息や肺炎などを起こすおそれがあります。

2  保護者の皆様に御注意いただきたいこと

  当該玩具が喉に詰まってしまったら、一刻も早く医療機関に行くことが重要です。

  最悪の場合、死に至るおそれもあるので、すぐに救急車を呼びましょう。

  また、耳や鼻に当該玩具を入れてしまった場合は、喉に詰まった場合と比較して緊急性は低いですが、医療機関を受診しましょう。

  医療機関を受診する際は、当該玩具の同型品やパッケージを持参して、医師に見せると、原因の特定と治療が円滑になります。



※詳細は下記ソースよりご確認ください。



【ソース】消費者庁:2019年2月15日 カプセル入りスポンジ玩具が幼児の体内に入る事故が発生!-原因不明の不調が約4か月続き、その後、全身麻酔で摘出-
【ソース】消費者庁:生命・身体にかかわる危険

Wikipedia

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