世界各地では、依然としてテロリストやテロ組織などが広める過激思想に影響を受けたとみられる者によるテロ事件が発生し、多くの一般市民が犠牲となっています。
平成26年にカリフ制国家の樹立を宣言し、イラクやシリアで勢力を伸ばし広大な地域を支配したISILは、諸外国の支援を受けたイラク軍やシリア軍等によって、これまでに、支配地域の大部分を失った一方で、残存勢力がシリア国内で活動しています。また、世界各地にISILを支持する勢力が存在し、それぞれが活動する国や地域でテロを行っています。平成29年には、フィリピンの親ISIL勢力が、同国南部で都市の一部を占拠して、5か月間にわたって政府軍との戦闘を続けました。
また、イラク、シリアといった紛争地域でISILなどに加わった外国人のテロリストたちが、今後、出身国や第三国に渡り、テロを引き起こすことも懸念されています。
さらに、ISILやアル・カーイダといったテロ組織は、インターネット上でSNSなどの各種メディアを利用して過激な思想を広めているほか、欧米諸国において、爆発物、刃物、車両を凶器としてテロを行うよう呼び掛け、これに呼応したとみられる事件が相次いで発生しています。
我が国に対する国際テロの脅威
このように、世界各地でテロ事件が依然として起きており、平成28年7月に発生したバングラデシュ・ダッカにおける襲撃テロ事件をはじめ、現実に邦人や我が国の権益がテロの被害に遭う事案などが発生していることから、今後も邦人がテロや誘拐の被害に遭うことが懸念されます。
また、ISILはインターネット上で公開した動画などを通じて、今後も邦人、我が国の権益をテロの標的とすることを繰り返し主張しているほか、アル・カーイダも、米国とその同盟国を敵として攻撃することを呼び掛けています。多くの米国権益を国内に抱える我が国が、テロの標的となる可能性は否定できません。
殺人、爆弾テロ未遂等の罪で国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配されていた者が、我が国へ不法入出国を繰り返していたことが判明しているほか、ISIL関係者と連絡を取っていると自称する者、インターネット上でISILへの支持を表明する者が国内に存在しています。これらは海外のテロ組織などの影響が我が国にも及んでいることを示しており、我が国に対するテロの脅威は現実のものとなっているといえます。
警視庁の取組
テロは、一度でもその発生を許せば、多くの者が被害に遭うほか、我が国の社会にも大きな混乱を招くなど、その影響は甚大なものとなります。
警視庁では、テロを未然に防止するため、情報収集・分析、水際対策、警戒警備、事態対処体制、官民連携といったテロ対策を強力に推進しています。
また、万が一、テロが発生した場合に備えて、テロ対処部隊等を設置するとともに、有事の際に迅速的確な対処を行うため、関係機関と連携して、日々訓練を実施しています。
官民一体のテロ対策
テロ対策は、警察による取組だけでは十分ではなく、皆様と緊密に連携して推進することが必要です。
警視庁では、テロ対策に関する様々な官民連携の枠組みに参画し、テロ対策に関する研修会などを実施するほか、平成20年には「テロ対策東京パートナーシップ推進会議」を発足させ、「テロを許さない社会づくり」というスローガンの下、テロに対する危機意識の共有や、大規模テロ発生時における協働対処体制の整備などを推進しています。
また、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会をはじめとする大規模スポーツイベントなどの開催を見据え、こうした官民連携の枠組みなどを活用して、合同訓練や合同パトロールなどを実施し、テロ対処能力の強化を図っています。
爆発物の原料となり得る化学物質等は、薬局、ホームセンターのほか、インターネット通信販売サイトなどで購入が可能です。
警視庁では、これらの販売業者に対して、継続的な個別訪問のほか、不審な購入者の来店等を想定したロール・プレイング型訓練を実施するなどして、販売時における本人確認の徹底、保管管理の強化、不審情報の通報などを要請しています。
このほか、ホテルなどの宿泊施設、インターネットカフェ、レンタカー事業者などとの連携を図り、テロ等違法行為の未然防止に努めています。
我が国でテロを引き起こさせないためには、皆様の御協力が不可欠です。
「いつもと違うな」、「何かおかしいな」と感じたら、迷わず警察への通報をお願いします。

事件・事故に関する情報提供
※詳細は下記ソースよりご確認ください。
【ソース】警視庁:国際テロの脅威 更新日:2019年1月18日
【Wikipedia】ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件(犯人の一人は日本国籍も有するバングラデシュ人、犠牲者の中には、国際協力機構(JICA)関係者である男性5人と女性2人の日本人7人が含まれていた)