【質疑応答】
問)
AIIBのことでお伺いします。アジアのインフラ需要を巡って、将来的にはADBともライバル関係にもなりえると思うのですけれども、日本としては参加しないということを昨日、大臣もおっしゃっていましたが、国際機関としてAIIBに今後どんな機関になってもらいたいのか。
答)
AIIBにおいて一番の問題は、融資や審査の経験がない、もともと中国において、社会主義国家の中において、自由主義に基づいて融資するにあたってコネというのではなくてその事業という仕事の物件に関して、その収益性や将来性というものを審査したうえでお金をいくら出すかという審査能力がない。それが今、お金は持った、傍らアジアにおいて社会資本整備に関するインフラストラクチャーに関する要望はきわめて大きい、しかも急激に増えてきているというもの対して、ADBでは資金が十分ではないということになってくると、そういったものの両方を考えるとADBで審査したものにAIIBが協調融資するという形を今回やろうとしているということは良い流れだと思います。問題はお金を貸したらそれは取り戻すというのが仕事で、あげるのではなくて貸すのですから、それを世銀やADBでみて、たとえば、この国では精一杯だからこれ以上は返すだけの能力がないと思って貸し込みはこの程度で、ということを決めているところに後から来たAIIBがお金を貸すと、取り逸れるのはそっちだけなら良いが三行同じだというようなことになると、極めてADBや世銀に不利益が生じかねない。AIIBの今後の行動をよく見たうえで日本の態度を決めます。今、少なくとも理事会が毎月開かれるわけでもないみたいですし、そういったようなことを一つ一つ見たうえで決めたいと思います。これもこれまで申しあげているとおりです。
問)
今のAIIBなのですけども、金立群さんがADBのセミナーで「われわれは脅威ではない」というふうにおっしゃっていたのですが、大臣は今は確かにノウハウはないのですけども中長期に見てライバルになり得る存在だとお考えですか。
答)
ならないでしょうね。基本的には、中国のお金が無尽蔵にあるわけでもないですけれども、少なくともADBもそれを賄うだけのお金が無尽蔵にあるわけではありませんから、アジアの方のインフラストラクチャーというものはかなり出てきますが、そういった意味では今ヨーロッパが停滞している中、間違いなく世界の中でアジアという地域は今後しばらく伸びていきますが、その伸びていくところでの資金量の不足をAIIBとADBがうまく組んでいくという形になると最高なのでしょうけれども。どちらのほうがというとそれは信用力の桁が違いますから、それはADBのほうが圧倒的に安く賄える。たとえばランク付けも、トリプルAがついているというのは、日本とアメリカが一番二番という世銀とかADBとかで、そういうところがトリプルAをとっていることを考えると、AIIBはたぶんこれからいろんな形で世界中にファンドを売ってくる形で金を賄うのであって、人民銀行からお金を借りるということではないように見えますから、そうするとファンドレイジングをこれからやることを考えるとなると、片方トリプルAがついているところとそうではないところとで大分違いが出てくると思います。そこで競争になるということは考えにくいですが、なればそれはそれで良いことだと思います。
問)
今日の総務演説の中で、日本の質の高いインフラ整備について、質の高さといったものをやはりこれから日本の技術力といったもので差別化といいますか強みになるとお考えでしょうか。
答)
たとえば、バングラデシュとかラオスでは、お札の裏の写真が橋になっていると思いますけども。ラオスでは橋の名前は日本橋と書いてある。あそこに行った人はみんな知っている。なぜその橋がそう呼ばれているかというと、メコン川に架けた橋のうち、日本が架けた橋は流れない。だから、一番質の高いというのは日本の橋というので、象徴的なものとしてお札の裏になった経緯だそうですけれども、少なくとも日本の持っているそういった技術というものは、短期的にみるとイニシャルコストが高いからアメリカから見てもヨーロッパから見ても日本の方が高い。しかし、長い目でみたら、こっちは一回架けたら流れないから。何回も架けるのに比べてはるかにこっちのほうが安いというような例っていうのは、一回作ったら道路がなかなか壊れないとか、たとえば最近でいえば発電所。同じ発電機を使っても発電のクオリティが高いから結果として発電コストが二割安くなりました。日本の場合は、発電所をつくる、発電するのを教える、オペレーションを教えるだけではなくて、それをどうやってメンテナンスするかというところまで教える。メンテナンスするということを教えると、そこに技術屋が育つ。その技術屋を育てて渡していくから、少なくともその発電所は20年経っても30年経ってもクオリティを高く出す。結果的にトータルコストはすごく安くなるというのは、日本の持っている技術プラス日本の持っている丁寧に教えて人を育てるということに関して、日本の場合は明らかに他の国とは少し違う、一緒に働いて一緒に技術を教えるというのはインドの地下鉄の例をみるまでもなく、ほかに例を挙げたらいくらでも出ますけれども、そういったようなものが日本の持っている、たぶんインフラの中でも最大の強みではないでしょうか。
※詳細は下記ソースよりご確認ください。
【ソース】財務省:麻生副総理兼財務大臣兼内閣府特命担当大臣記者会見の概要(平成28年5月4日(水曜日))