洗濯用パック型液体洗剤は、新たな形の洗濯用洗剤として、近年、日本でも製造販売が行われています。計量の必要がなく簡便という利点があるものの、フィルムが破れ、洗剤が口や目に入る等の事故情報が消費者庁に寄せられています。フィルムは水に溶けやすいため、子供が握ったり噛んだり遊んでいるうちに、破れてしまうケースが多く、特に3歳以下の乳幼児に被害が集中しています。
また、海外でも同様の洗濯用パック型液体洗剤で、同種の事故が多数報告されています。
乳幼児の手の届かないところで保管するよう注意して御使用ください。
また、海外でも同様の洗濯用パック型液体洗剤で、同種の事故が多数報告されています。
乳幼児の手の届かないところで保管するよう注意して御使用ください。
備考:本件公表は、経済協力開発機構(OECD)、欧州委員会及び21の国が連携して取り組む「洗濯洗剤カプセル/パケットに関する国際啓発キャンペーン(2015年3月16日~23日)」の一環として実施するものです。世界では、洗濯用パック型液体洗剤に関する事故が年間16,000件以上報告されており、国際社会全体で洗濯用パック型液体洗剤の安全な使用と保管について啓発を促進することを目指しています。
1.洗濯用パック型液体洗剤について
国内で販売されている代表的な洗濯用パック型液体洗剤は、中性の濃縮液体洗剤を水溶性のあるフィルムで包んだ、触ると柔らかいものです。
大きさは、3.6×4.1×3.0 センチメートル(平均)で、3歳児が手で持ったところ片手で覆えない大きさでした。3歳以下の乳幼児の口の大きさには入らないこと、フィルムが水に溶けやすいことを考慮すると、窒息の可能性は低いと思われますが、乳幼児は身の回りのものを何でも口に入れようとするので注意が必要です。(写真1)
写真1 代表的な洗濯用パック型液体洗剤


2.洗濯用パック型液体洗剤の事故情報
(1)主な事故事例
【事例1】
パックタイプの液体洗剤を子供が握ったら破裂し、目の中に入った。目の表面が洗剤で覆われてしまったので急いで水で洗い流し、治療を受けた。
(事故発生年月 平成26年6月、3歳・女児)
【事例2】
親が洗面所で洗濯中、別室にいた子供が吐き、泣き出した。洗濯機の横 60cm の高さに置いてあった洗剤をかじってしまった様子。すぐに吐き出させて口をゆすいだが、口が痛いという。
(事故発生年月 平成26年6月、4歳・男児)
【事例3】
高さ1メートルくらいの棚に保管していた洗剤を、子供が箱から1つ取り出して遊んでいたところ飲み込んだ。母親が指を突っ込んで吐かせ、牛乳を飲んで病院を受診。
(事故発生年月 平成26年11月、1歳・男児)
【事例4】
製品同士がくっつき始めたため、その度に剥がしながら使っていた。いつものように剥がそうとすると、フィルムが破れ、中身が目に入った。眼科を受診、1週間後にはほぼ回復。
(事故発生年月 平成26年10月、90歳代・女性)
(2)消費者庁に寄せられた事故情報の概要
国内で販売されている代表的な洗濯用パック型液体洗剤は平成26年4月に発売が開始されていますが、平成26年の発売開始から平成27年1月末までの間に、消費者庁には延べ152件の事故情報が寄せられています。内訳としては、事故情報データバンク※1に13件、医療機関ネットワーク※2に6件、製造事業者から130件(うち、公益財団法人日本中毒情報センター受付分が102件)、公益社団法人日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会Injury Alert(傷害速報)に3件となっています。
消費者庁に寄せられている事故情報の内訳を、図1、図2に示しています。年齢別では、3歳以下の乳幼児が110件(72.4%)と大半を占めており、またほとんどの事例が、フィルムが破れ中身が出て口や目に入ったというものです。
※1 「事故情報データバンク」は、消費者庁が独立行政法人国民生活センターと連携し、関係機関より「事故情報」「危険情報」を広く収集し、事故防止に役立てるためのデータ収集・提供システムです。(平成22年4月運用開始)
※2 「医療機関ネットワーク事業」は、参画する医療機関(平成 27 年3月時点で 24 機関)から消費生活上の事故情報を収集し、再発防止に活かすことを目的とした消費者庁と独立行政法人国民生活センターとの共同事業です。(平成22年12月運用開始)
※2 「医療機関ネットワーク事業」は、参画する医療機関(平成 27 年3月時点で 24 機関)から消費生活上の事故情報を収集し、再発防止に活かすことを目的とした消費者庁と独立行政法人国民生活センターとの共同事業です。(平成22年12月運用開始)
4.消費者の皆様へ
(1)洗剤は子供の手の届くところには置かないようにしましょう。
洗濯用パック型液体洗剤のフィルムは、水に溶けやすいため、舐めたり口に入れたりすると、唾液によりフィルムが溶け、誤って洗剤を飲んでしまうおそれがあります。また、濡れた手で握っているとフィルムが破れて洗剤が飛散し、口や目に入る可能性もありますので、子供の手の届くところ(特に床や洗面台の下等)には置かないよう注意して御使用ください。子供は、意外と高いところまで手が届きます。高いところであっても手前には置かないよう、また、近くに足場になるものがないよう気を付けましょう。



(2)洗剤を使用後は、必ずフタをしっかり閉めて、決まった置き場所にすぐ戻すよう習慣づけましょう。
少しの間、床に置いた隙に子供が触ってしまい、事故が発生しているケースもあります。使用後は必ずフタを閉めて、決まった置き場所にすぐ戻す習慣を作りましょう。
(3)パック型液体洗剤を濡らさないように、気を付けましょう。
水に濡れると溶けやすいフィルムのため、濡れた手で触ったり、フタを開けたまま保管すると、洗剤同士が付いてしまうことがあり、またそれを剥がそうとすると破れて中身が飛び出ることがあるので気を付けましょう。



5.対処方法※5
●飲んでしまった場合
できるならば口をすすがせ、水又は牛乳を少量飲ませて、受診する。吐物が気管に入ってしまうおそれがあるため、無理に吐かせない。
●目に入ってしまった場合
こすらずに、すぐに水で10分以上洗い流して、受診する。
●皮膚についた場合
すぐに大量の流水で洗う。付着した衣服は脱ぐ。
【眼科医からのアドバイス】 烏山眼科医院 福下公子医師
万が一、洗剤が眼に入ったときは、すぐに水で10分以上洗いましょう。なお、洗う際は、洗剤で眼の角膜が弱くなっているおそれがあるので、更に傷をつけないためにも勢いの強い水(水圧の強い水)で洗わないでください。また、眼の周囲にも飛び散っている場合には、濡れたタオルで丁寧にふき取り、決して強くこすらないでください。
洗眼が終わったら、必ず眼科医を受診し、眼に何が入ったのか告げましょう。また、夜間や休日に起きた場合には救急診療を受けましょう。その際には、眼に入った商品の成分が分かる成分表示が記載されたパッケージなどを持参してください。
※5 界面活性剤を含んだ中性又は弱酸性・弱アルカリ性の洗濯用洗剤への一般的な対処方法です。御使用の洗剤の容器等に表示されている対処方法を確認してください。
主な相談機関
◆小児救急電話相談
休日、夜間の子供の急な病気への適切な対処の仕方や、受診する病院等について、小児科医師や看護師のアドバイスを受けることができます。
#8000番をプッシュすると、お住まいの都道府県の相談窓口に自動転送されます。(通話料は相談者負担)
厚生労働省ウェブサイト:
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html
◆公益財団法人日本中毒情報センター 中毒110番
医薬品、化学物質(たばこ、家庭用品など)、動植物の毒などによる中毒事故への対処について、薬剤師等のアドバイスを受けることができます。
【連絡先】(通話料は相談者負担)
大阪:072-727-2499(24時間対応)
つくば:029-852-9999(9~21時対応)
日本中毒情報センターウェブサイト:http://www.j-poison-ic.or.jp
OECD 洗濯洗剤カプセル/パケットに関する国際啓発キャンペーン2015
各国における洗濯洗剤カプセル/パケットに関する事故や曝露についての報告は次のとおり
ドイツ連邦共和国:2004年から2011年までは事故情報なし。2012年には31件、2013年には70件である。データは国の16%をカバーする中毒センターにより報告された。最も影響を受けているのは1歳から4歳までの子供たちである。
チェコ共和国:2012年には月平均15件が報告された。その数は2013年(月24件)、2014年第一四半期(月31件)と増加している。
オランダ王国: 報告件数は近年増加しており、2010年の223件から2012年には434件(ボトルと液体カプセルの合計)となっている。国立中毒情報センター(NIPC) 及び食品消費者製品安全機構(Food and Consumer ProductSafety Authority)の報告によると、増加はもっぱらカプセルに起因するものである。2013年も同様の件数で、事故の起きる確率は販売された製品100万当たりほぼ3件であると推定された。影響を受けているのは大部分が0歳から4歳までの子供たちである。
イタリア共和国: 2012年から2013年までの洗濯カプセルの事故は月33件(年400件)であり、2013年末から2014年初めまでに数か月で230件が記録されている。
フランス共和国: 2005年から2013年までの洗濯カプセルの曝露数は7,500件以上。影響が及んだ94%は6歳未満で、ほぼ経口曝露(摂取)であった。角膜炎症が83件、呼吸器合併症が21件報告されており、そのうち集中治療が必要だったケースは6件(角膜炎症13件、呼吸器合併症13件)であった。
ベルギー王国: 2012年には134件、2013年には198件の事例が報告された。そのうち80%は1歳から4歳までの子供に関わるものであった。
ラトビア共和国:疫病予防管理センターの記録によれば、2013年から2014年までにかけての洗濯洗剤カプセルの事故は2件で、1歳の子供と高齢者である。
アイルランド: 2011年に144件、2012年には220件、2013年には191件が報告されている。これらの製品はアイルランドの市場では15-20%を占め、液体カプセルが関係しているケースは事故の60%であった。2012年の事故率推定は100万当たり4.8件である。81%は1歳から3歳までの子供である。
スペイン: 2013年に299件が報告された。
ポーランド共和国:人口の15%をカバーしている中毒センターからのデータによると、2012年から2013年までにかけて47件が報告された。
エストニア共和国:2012年に5件、2013年には46件、2014年の最初の3か月で4件の事故が報告されている。
ハンガリー:2013年に62件、2014年の最初の4か月で30件が報告された。
英国:英国の国立中毒情報センター(National Poisons Information Service)によると、最近の調査で 2009年5月から2012年7月までにカプセル関連の事故が1,486件あり、そのうち大多数が5歳未満の子供であった。4人の子供が呼吸困難になり、1人は気道熱傷、4人は呼吸を助けるために人工呼吸器が必要となった。年毎の報告された曝露データの内訳は、2010年486件、2011年434件、2012年422件、2013年424件、2014年404件である。
アメリカ合衆国:最近の小児科研究によると、アメリカ国立中毒センター(US national poison centres)は 2012年と 2013年に、6歳未満の子供が洗剤ポッドの化学物質に曝露されたケースが17,000件以上あったと報告している。769件で入院が必要となり、1人の子供が亡くなった。1歳と2歳の子供が2/3の割合を占める。ほぼ半分(48%)の子供が、洗濯洗剤カプセルが曝露した後に嘔吐した。他によく見られる影響としては、咳・息詰まり(13%)、目の痛み・炎症(11%)、倦怠・眠気(7%)、充血・結膜炎(7%)である。
オーストラリア連邦: 2011年4月から2015年2月までのオーストラリア中毒センター(Australian poisons callcentres)のデータによると子供への曝露件数は318件、2012年には108件であった。曝露数は2013年87件、2014年は95件、2015年は現時点までで3件である。ほとんどのケースは経口摂取で、目への曝露は少なくとも37件を占める。いくつかのケースでは直ちに病院に行くよう指示され、急性の症状(例えば嘔吐や下痢など)が続いた場合は述べるよう勧められている者もいる。
日本: 洗濯洗剤カプセルに関する曝露報告は2014年及び2015年で計152件であった。2014年は140件、2015年は1月末までで12件であった。報告の約72%は0歳から3歳までの子供である。内訳としては、口内曝露及び摂取が104件(約68%)、目への接触は46件(約30%)、皮膚曝露11件(約7%)である(重複を含む。)。
ポルトガル共和国: 2009年から 2014年までにかけてポルトガルでの洗濯洗剤カプセル曝露件数は231件。内訳は2009年から2011年までは5件、2012年は33件、2013年は68件、2014年(11月まで)は125件であった。最も影響のあった子供の年齢層は1-4歳で、主に口内曝露で、目や皮膚の曝露は少なかった。
大韓民国: 2011年から2014年までの傷害データによると約3件のみであった。2件は幼児 (11か月と1歳の男の子)。
※詳細は下記ソースよりご確認ください。
【ソース】消費者庁:2015年3月18日 洗濯用パック型液体洗剤に気をつけて!-特に3歳以下の乳幼児に事故が集中しています-
【ソース】消費者庁:消費者への注意喚起 2014年度