2019/03/10

【警察庁】北朝鮮によるテロ等 ~ 焦点269号より

1 北朝鮮によるスパイ事件

  我が国は、朝鮮半島と地理的に近接しており、また、歴史的経緯から60万人を超える韓国・朝鮮人が居住していることから、北朝鮮は我が国をスパイ活動の重要拠点ととらえ、日本及び韓国に関する情報収集、在日米軍に関する情報収集、さらには、日本人の北朝鮮への拉致などの活動を行ってきました。

  警察は、これまで約50件の北朝鮮によるスパイ事件を検挙しています。そのうち、沿岸部における水際での北朝鮮工作員の検挙件数は、約15件です。

  これまで検挙した事件から、次のような事項が明らかとなっています。

【工作活動の目的、任務の変遷】

(1) 昭和25年9月から33年10月にかけて検挙された「第一次~第四次北朝鮮スパイ事件」などは、激動する朝鮮半島情勢を背景として、
● 在日米軍に関する情報収集
● 我が国の警察予備隊、保安隊に関する情報収集
などを目的としていました。

(2) 39年7月に検挙された「本庄浜事件」、「一宮事件」、同年10月に検挙された「寝屋川事件」等は、
● 我が国の政治、経済、外交、軍事等に関する情報収集、特に、自衛隊に関する情報収集
等を目的としていました。

(3) 51年6月に検挙された「布施事件」等は、
● 在韓スパイ網埋設のための獲得工作等の対韓工作
● アジア等の海外拠点との連絡、海外スパイ網埋設のための各種工作
等を目的としていました。

(4) 52年9月に検挙された「宇出津(うしつ)事件」や53年6月ころ発生した「李恩恵(リ・ウネ)拉致容疑事案」等は、
● 日本人の北朝鮮への拉致
を目的としていました。

(5) 最近検挙された「新宿百人町事件」(平成12年11月)、「東中野事件」(15年2月)では、対韓地下党工作や、万景峰(マンギョンボン)92号を利用した指令文書のやりとり、工作員への指導等を目的としていたことが明らかとなっています。

【北朝鮮工作員の経歴】

(1) 日本で長期の生活経験を積んだ上で北朝鮮に帰国し、北朝鮮工作員として採用された者
(2) 北朝鮮において高等教育を受け、情報機関に採用された者
(3) 在日の韓国・朝鮮人で、北朝鮮工作員に獲得された者
等多岐にわたっています。

【工作員の身分偽変の実態】

(1) 精巧に偽造された外国人登録証明書
(2) 他人名義の真正外国人登録証明書に自己の写真を貼付したもの
(3) 実在する日本人に成り代わり取得した旅券や運転免許証
等を入手して、自らの身分を偽変して本邦において工作活動を行っていたことなどが分かっています。

  一方、北朝鮮工作船の活動に関しては、これまで、3年5月に検挙した「美浜事件」や13年12月に発生した「九州南西海域工作船事件」において、船体、船内から発見された多数の証拠物等により、当該船舶を北朝鮮工作船と特定するに至っていますが、これ以外にも、相当数の北朝鮮工作船が我が国の領海内に侵入してきているものと思われます。

  これら北朝鮮工作船は、これまでの検挙事例やその他の情報を総合的に判断して、工作員の潜入・脱出を行ったり、日本人拉致等を行うことを目的として活動しているとみられます。


乱数表「美浜事件」(平成2年10月28日、福井)


万景峰92号を介した工作活動を報道する各紙
(平成15年1月29日、朝日新聞、東京新聞、読売新聞) 


「九州南西海域工作船事件」(平成13年12月22日)
で引き上げられた工作船(海上保安庁提供)



2 北朝鮮による日本人拉致容疑事案

1 概要 

  平成14年9月に平壌(ピョンヤン)で行われた日朝首脳会談で、金正日(キム・ジョンイル)国防委員長は、これまで一貫して否定し続けてきた日本人拉致容疑事案について、「(日本人拉致は、)特殊機関の一部の妄動主義者らが、英雄主義に走ってかかる行為を行ってきたと考えている」との認識を示した上でこれを謝罪しました。その後、北朝鮮から生存と伝えられた5人の拉致被害者が帰国し、24年ぶりに家族との再会を果たしました。

  警察では、現時点、北朝鮮による拉致容疑事案は、10件15人としています。これらの拉致容疑事案の発生時期は、昭和52年が2件、53年が5件、55年が2件、58年が1件となっています。



2 拉致の目的 

  北朝鮮による日本人拉致容疑事案について、その目的は必ずしも明らかではありませんが、金正日国防委員長は、日朝首脳会談の席上、日本人拉致の目的について「一つ目は特殊機関で日本語の学習ができるようにするため、二つ目は他人の身分を利用して南(韓国)に入るためである」と説明しました。

  また、よど号犯人の元妻は、金日成(キム・イルソン)主席から「革命のためには、日本で指導的な役割を果たす党を創建せよ。党の創建には、革命の中核となる日本人を発掘、獲得、育成しなければならない」との教示を受けた田宮高麿から日本人獲得を指示されたと証言しており、日本人拉致の背景には、金日成主義に基づく日本革命を行うための人材獲得という目的もあったものとみられています。



3 北朝鮮による主なテロ事件

1 韓国大統領官邸(青瓦台)襲撃未遂事件(昭和43年1月)

  韓国軍人に偽装して同国に潜入した北朝鮮の武装ゲリラ31人が、朴正熙(パク・チョンヒ)・韓国大統領ら韓国要人の暗殺を企図して、韓国大統領官邸(青瓦台)から数百メートルの路上で、民間人5人と警察官1人を射殺しました。

  韓国当局により、武装ゲリラ31人のうち30人が射殺され、1人が逮捕されました。

  本事件は、朝鮮人民軍偵察局による犯行とみられています。

2 朴韓国大統領狙撃事件(昭和49年8月)

  ソウル市内にある国立劇場で開催された光復節式典会場において、在日韓国人の文世光(ムン・セグァン)が、演説中の朴正熙大統領にけん銃を発射し、陪席していた陸英修(ユク・ヨンス)同大統領夫人を射殺しました。

  同人は、大阪府警察の派出所からけん銃を窃取し、日本人名義の旅券を不正に入手して渡韓し犯行に及んだもので、韓国当局は、事件には、北朝鮮及び朝鮮総聯の関与があったと発表したほか、文自身も韓国における裁判でこれを認めています。

3 ラングーン爆弾テロ事件(昭和58年10月)

  北朝鮮貨物船の船員に偽装してビルマ(現ミャンマー)に潜入した北朝鮮の武装ゲリラ3人が、同国を親善訪問中であった全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領を始めとする韓国政府要人の暗殺を企図して、同大統領一行の訪問地である「アウンサン廟」において爆弾テロを引き起こし、韓国外務部長官等21人を死亡させ、47人を負傷させました。

  ビルマ当局により、武装ゲリラ3人のうち1人が射殺され、2人が逮捕されました。

  本事件は、朝鮮人民軍偵察局による犯行とみられています。

4 大韓航空機爆破事件(昭和62年11月)

  日本人名義の偽造旅券を所持して日本人になりすました北朝鮮工作員の金勝一(キム・スンイル)と金賢姫(キム・ヒョンヒ)が、バグダッド発アブダビ、バンコク経由ソウル行きの大韓航空機858便に時限爆弾を仕掛け、アブダビからバンコクへ向かう途中のビルマ南方アンダマン海域上空で爆破させて乗員・乗客115人全員を死亡させました。

  バーレーン当局により、2人は身柄を拘束されましたが、両名は服毒自殺を図り、金勝一は死亡しました。

  金賢姫の供述等から、同人らは朝鮮労働党対外情報調査部に所属し、北朝鮮において「ソウル・オリンピック(63年9月)を妨害するため大韓航空機を爆破せよ」との指令を受けたことが判明しました。



※詳細は下記ソースよりご確認ください。



【ソース】警察庁:北朝鮮によるテロ等(1) テキスト
【ソース】警察庁:北朝鮮によるテロ等(2~3) テキスト
【ソース】警察庁:北朝鮮によるテロ等 PDF
【ソース】警察庁:警備局 刊行物 焦点

Wikipedia

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